学校生活に適応しにくい子供たちに、どのような支援が可能か考えてみましょう。

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1 子供支援の基本姿勢

 高機能広汎性発達障害の子供も、基本的には自閉症スペクトラム(連続体)なので、どのような場合でも自閉症スペクトラムの特性から理解することが大切です。「こんなことぐらいみんなと一緒にできるだろう」、「これぐらいわかっているだろう」という推測は子供を追いつめることになります。子供の立場に立って、支援することが大切です。


2 高機能広汎性発達障害児の社会性

 自閉症の子供の場合は、視線を合わさないようにしたり、一人でいることを好んだりしますが、高機能広汎性発達障害の子供は友達や大人との関係を築きたがる子も少なくなく、初対面から質問をしたり、気を引くような態度をとったりすることがあります。
 また、自分の空間をもち、その空間を大切にします。そのため急に近づかれたり、言葉をかけられたりすると驚いてしまうことがあります。パニックを起こすこともあります。


3 高機能広汎性発達障害児のコミュニケーション

 高機能広汎性発達障害の子供は、基本的なコミュニケーションの方法は習得しているようです。しかし、言葉でのやりとりだけがコミュニケーションだと思っていることも多く、会話を楽しむ、とかその場の雰囲気を味わうということが苦手なようです。話のやりとりも自分の好きな事柄ばかり話す子もいます。話題をまわりの子供や大人が変えても、自分の好きな事柄に話題が戻ってしまいがちです。
 冗談、比喩、皮肉、ほのめかしで混乱する子もいます。いたずらをした時に担任の先生が「まあ、なんて素晴らしい子かしら。」と皮肉を言ったのに対して、《このいたずらをすると先生は喜んでくれる》と思い込み、いたずらを繰り返してしまった例もあります。逆にだじゃれが好きな子供もいます。話の内容や意味よりも、言葉の音韻や響きを楽しんでいるようです。
 しかし、緊張したり、学習発表会や運動会などでストレスが加わったりすると普段のように話せない子もます。緊張したり、ストレスが加わったりすると、独り言が多くなったり、一時的に寡黙になったりします。
 一日のスケジュールを視覚化したり、簡単な絵を用いたりして見通しを持たせるとともに、感情表現の練習するとよいとでしょう。話し言葉は簡潔で分かりやすい普遍的な言葉を用いるとよいでしょう。高機能広汎性発達障害の子供は、自分の特異な世界(ファンタジー)をもっているので、その豊かな世界を共有しようとする気持ちが必要です。


4 不適応行動への対応

 高機能広汎性発達障害の子供は、基本的には相互干渉を嫌いますが、些細なきっかけで衝動的に行動したり、他害や自傷行為をしたりすることがあります。また、特異な世界(ファンタジー)を大切にしている子供ですから、自分の大切にする世界に勝手に入られると衝動的行動に出ることがあります。そして、友達にちょっかいを出したり、他害をしたりするときは、その子なりの理由が必ずあります。教師は、その理由を子供と共有できる感性をもちあわせたいものです。
 また、高機能広汎性発達障害の子供は、具体的で予測可能なことが好きで変化を苦手とします。あいまいなこと、突然の時間割変更などは、対応がしにくく、《自分のスケジュール》が乱れてしまい怒りだしてしまうことがあります。


5 過ごしやすい環境

 他の刺激が入らないように、教師の側の席が良いようです。隣の子は、「落ち着いた子供」の方がうまく学校生活を送ることができるようです。他害や衝動的な行動をする子供は、隣の子の席との距離を少し離したり、隣の席を空席にすると良いでしょう。また、授業の緊張を崩すために、わざと過激な言葉を使うことがあります。そのようなときには、教師は過剰な反応をしないことが必要です。静かな空間に置き、落ち着いたら学級に戻すことも有効な手立てです。


6 長所を生かした指導

 最初に、子供の長所を把握することが大切です。「できないことをできるようにする」という考え方より、「できることをよりできるようにする」という考え方のほうが子供と教師の間に緊張やストレスが高まらず良い方向に向かうようです。
 高機能広汎性発達障害の子供たちの中には、優れた記憶力がある子や、特定の領域で優れた知識をもっている子が多くいます。数学や科学に強いという場合もよく見られます。このような長所を学校生活の中で生かすとよいでしょう。
 例えば、ことわざをたくさん知っていたりしたら、「ことわざ博士」として国語の時間に発表してもらうのもよいでしょう。そうすることで、友達から認められる場にもなることでしょう。工作が得意な子には「工作名人」、計算が得意な子には「計算名人」などになってもらい、興味のある分野をさらに伸ばしてあげてください。長所を十分伸ばしていくことで、短所も気にならなくなることもあるようです。

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 障害についての理解を深めることが、子供の個性を認め、一人一人を大切にすることにつながります。

《参考文献》
・「高機能広汎性発達障害 −アスペルガー症候群と高機能自閉症ー」
            杉山登志郎、辻井正次 ブレーン出版
・朝日福祉ガイドブック「自閉症の人たちを支援するということ 
    −TEACCHプログラム新世紀へー」 朝日新聞厚生文化事業団
・「アスペルガ−症候群と高機能自閉症」
            杉山登志郎 月刊障害児教育 Xol.338 学研

愛知県総合教育センターより引用させて頂きました。

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